「株式会社フューチャー・デザイン・ラボ」 代表取締役会長 竹原啓二 様
人口減少が加速する中、外食産業は深刻な人材不足に直面している。日本人だけでは支えきれない現状において、特定技能外国人の活用が業界の成長を左右する鍵となり、希望となり得る。株式会社フューチャー・デザイン・ラボ代表取締役会長竹原啓二さんに、外食産業の未来について聞いた。
(プロフィール)
香川県坂出市出身。1976年岡山大学法文学部卒業後、株式会社リクルートに入社。取締役や常務執行役員を歴任し、HR事業や地域活性事業、ホットペッパー事業など多岐にわたる分野を担当。2004年に東京大学副理事を務めるほか、不登校児支援や国際交流活動、アフリカの最貧困支援に携わるNPO活動にも従事。2007年、株式会社フューチャー・デザイン・ラボを設立し、現在に至る。
人口減少で直面する外食産業の危機
日本の人口減少は未曾有のスピードで進行しています。2024年の出生数は70万人を下回る可能性が非常に高く、今後も年間4万人ずつ減少すると予測されています。18歳人口は115万人程度で、団塊世代の230万人から半減以下。大学卒業者は約45万人、専門学校卒業者は約20万人、高校卒業後に就職する若者は約11万人といずれも減り続け、労働力の底支えは崩壊寸前です。
外食産業は、大企業と比べて給与や労働環境の厳しさから、若年労働力の減少と業種間の人材獲得競争の二重の問題に直面しています。もはや日本人の労働力だけでは支えきれない状況の、最大の解決策が2019年に導入された特定技能外国人の制度です。外食企業にとってもはや選択肢ではなく、生存戦略そのものと言えるでしょう。
危機を直視し、現実的な対策を講じなければ、外食産業に未来はありません。経営者のみなさん、準備はできているでしょうか?
特定技能外国人を早期採用した企業は成功している
特定技能外国人は2024年6月末時点で約25万人に達しており、外食分野でも2万人を超え、1年前の倍以上に増加しています。外食産業でも早くから採用を進めた企業が、人材不足を克服し、出店攻勢に転じています。中には採用した外国人材を育成しながら、海外への店舗展開を積極的に行っている企業も多数あります。
また、特定技能外国人は母国の文化や知識を活かして新しいメニューを提案するなど、外食産業に刺激を与えてくれます。私が支援をしている企業では従業員の3分の1が外国人の企業もあり、国籍を超えて切磋琢磨するなど、特定技能外国人の活用は大きな力になっています。
早くから特定技能の採用に踏み切っている企業では、既にそういった、「育成」と「定着」の制度、文化が出来ており、安定的な人材戦略が作れる状態に入ってきています。
人間力は文化や言葉の壁を超える
文化や言葉の違いが原因でトラブルが起きるのではないかという誤解があります。こうした問題は、受け入れる側の体制整備で十分に解決できます。
むしろ重要なのは、真摯な姿勢で仕事に臨む人間性なのではないでしょうか。実際、外国人社員がマネージャーとして成果を上げる事例も増加しています。
もちろん、最初から順調にはいかないかも知れません。しかし、外食産業が直面する課題を考えれば、少々の失敗でくじけている場合ではない。それを糧にチャレンジし続ける姿勢こそが、単なる労働力の補填を超え、持続可能な仕組みを構築できると思います。
特定技能外国人が外食産業の柱に
厚生労働省は2030年までに特定技能外国人が100万人を超えると見込んでいます。この状況下で、外食業界は外国人材を「新しい日本人」として受け入れる姿勢が求められます。現場での研修やサポート体制を整備し、地域社会と連携して外国人材が一市民として生活に溶け込める環境を構築する必要があります。これにより、労働力の安定が図られ、業界の競争力も向上するはずです。
さらに、現行の特定技能制度を基盤とし、5年間の経験を経た後に永住や長期就労を可能とする“第2ステップ”を導入することが不可欠です。外国人が長期的に働ける仕組みを整えれば、外食業界の持続的な発展だけでなく、日本全体の労働力不足解消にも役立ちます。
「日本人」「外国人」という区別が薄れ、「国をまたいだ就職」が当たり前になる未来が近づいています。その先を見据え、外食業界が主体的に動き、次世代の基盤を築く時が今、来ているのです。